妄想に生かされる

自分語り、BL、創作、性癖などを置いていく場所

掃き溜め

 吐き出すところがこんなところしかなくて、久々にブログの編集画面を開く。

 こんなとき相談ができる友人がいないってのは寂しいものだと、実感する。

 一晩経てば頭も冷えるだろうと思ったが、未だどうにもならないようなので、ここで独りごちろうと思う。

 

 

 まず、俺には兄と妹がいる。とはいっても、兄とは義父きょうだいで歳も一回り以上離れ、兄は家を出て久しいのでもう顔も思い出せないほど音沙汰が無い。たまに母が連絡を取っているらしいが、どこでどんな仕事をしているのかすらあまり把握できていない。

 対して妹とは2つ違いで、昔は仲も良かった。友達と遊ぶときはいつも姉妹一緒だった。自分が小5のとき両親が離婚し、俺が父、妹が母について別々に暮らすことにはなったが、住居の距離的にはそう遠くなかったので妹はしょっちゅううちに遊びに来たりして、むしろ離婚前より仲が良くなったくらいだった。俺が実は性同一性障害かもしれないということをそれとなく話してみたときも、「姉ちゃんは姉ちゃんだからいいんじゃない」と受け入れてくれた。まだ正式な診断を貰う前だったので、味方がいたということはとても心強かく、嬉しかった。

 だが、俺が高校卒業する頃くらいだろうか。妹との会話がだんだん減り、同じ空間にいてもろくに口をきかなくなっていった。これといったきっかけはなかった……つもりだ。ふと見た妹のSNSのつぶやきで、俺に対する恨みつらみを並べているのを見てしまったが最後、俺は妹と関わることをやめた。何故妹との会話が減ったのか、自分には心当たりがまったくなかったので、「なんでこんな好き勝手言われなきゃならんのか」と腹も立ったし、あっちがそういうつもりなら無理に関わることもないだろうと。

 幸い、俺が仕事を始め一人暮らしを始めてからは、ほとんど……というかほぼまったく、妹と顔を合わせることもなくなった。その後も妹は父親の家には時折寄っていたみたいだったが、たとえば家族で飯を食うとか遠出するとか、そういった機会にも、その場に妹がいるなら俺は断ってきた。だって、絶対に会いたくなかった。

 昔から妹は活発で、気が強く、俺とは正反対の性格をしていた。俺は歳をとるにつれ妹へのコンプレックスを募らせていたし、自分の病気のことも引き合いに出し、きっとあっちは俺の存在そのものを今となっては疎ましく思っているのだろうと決めつけ、今後は一切関わりを持たないようにしようと心に決めていたのだ。

 

 それが、つい昨日のことだ。

 妹が妊娠している、と父親から聞かされた。

 

 俺は一瞬頭が真っ白になって、処理が遅れた。理解してからも「ああ……」とか「そう……」とかしか答えられなかった。

 いや、え? は? ……え? 妊娠? なにそれ? あつまれどうぶつの森しながら聞く話じゃとてもねえよ。どういうこと?

 

 父の話では、相手は26歳で、そこも母子家庭らしく、妹の誕生日を待ってプロポーズするつもりでいたらしい。でも妊娠が先に判明してしまったということだろう。

 父は付き合っていること自体は知っていたらしい。だが流石に妊娠には驚いたのだろう。相手は産んでほしいと言っているけれど、父は妹に「自分のしたいことも一切できなくなるよ?」と言ったらしい。母は、「先々のことを考えたら出産は早いほうがいい」と言ったらしい。

 実際、妹と両親の間でどんな会話が交わされたのかは知る由もない。母は40手前で俺と妹を産んだし、大変さを知ってて、そう言ったんだろうなとは想像つくが。父が俺に報告した以上の沢山の言葉が飛び交ったかもしれないし、両親も妹もまだ今後どうするか考えている最中かもしれない。

 俺は必死にコントローラーを動かしながら、なるべく父親の顔を見ないようにして話を聞いた。どういう顔をしたらいいかわからなかった。「相手が妊娠がわかった途端逃げるような男じゃなくてよかったじゃん」「そうなったら日本刀持って怒鳴り込みいくところだったな」とかいう冗談で笑ったりもしたが、内心とても笑える気分ではなかった。

 

 ……本音を言えば。俺がまともじゃない分、結婚も子供も望めない分、そして兄も頼りにならない分、望みを託せるのは最早妹しかいないと思い、妹だけはいつか普通に結婚し、孫を両親に抱かせてあげてほしいと願っていた。できそこないの俺とは違って、まともな妹なら、そんな希望がきっと叶えられる筈だから。

 その気持ちは今でも変わっていない。だがまさか、こんなに早くその時が訪れるなんてまったく予想してなかった。だってまだ妹は21だ。誕生日が来たって22だ。早すぎる。話を聞いて真っ先にそう思ってしまった。

 妹とは関わりを絶って久しい。一度だけ自動車教習所でばったり鉢合わせし、「来てたんだ」「うん」というやり取りをたった一度しただけ、それきりだ。最初目の前に立っているのが妹だと思わず、美人のお姉さんがいるな程度に思ってたのが、顔をよく見てみたら妹だった。すでに俺の記憶の中の妹とは全然違っていた。

 俺が知らないうちに、妹はとっくに女になっていたのだ。それが衝撃だった。

 おそらく父や母は俺よりもっと衝撃を受けただろうし、俺がこんなにショックを受ける理由も、悩む必要もまったくないはずなのだ。だけど、昨日からそのことばかりが頭を離れず、まともにものを考えられない。一晩経ってもまだ。今もまだ夢なんじゃないかと思わずにはいられない。抱えたことのない感情に押しつぶされ、ノイローゼ気味になっている。

 

 結婚とか出産とか、そんなのはもっとずっと未来の話だと思いこんでいた。しかも今は自分が求職中ということもあって、己のことで精一杯になっていた。なのにいきなりそんなことを聞かされてもどう受け止めればいいかわからない。

 けれど混乱の中でも、確かなことと、新たに考えたことがある。

 妹が今後どうなるかはわからないが、もし妹が本当に結婚することになったとしても、俺は妹とは関わりを持つことを望まない。存在ごと消してくれていい。妹が「自分の家族は父母だけです」と相手に紹介するのが最善だと思う。俺のような病気を持った人間は世間には受け入れられないことがほとんどだ。妹が望むなら結婚式も行かないし甥姪にも会わないし、縁を切ったっていい。それくらい、妹とは関わりを持ちたくない。

 まぁそれは昔から考えていたことだが、いざそうなってみて新たに思ったこともある。縁は切ったとしても、親孝行という意味で、また一応血の繋がったきょうだいとして、兄らしく、伯父らしく、妹を助けることもできるのではないか。助けるべきなのではないか。

 親に楽をさせてあげることもできず、迷惑ばかりをかけ、家族や孫の顔も見せてやれない俺ができることなんて、妹を陰ながら支えてやることしかないんじゃないか?

 そう思ったら、今の自分の状況が情けなくて仕方がなく思えてきた。俺には悩んだり立ち止まる時間なんてない。一刻も早く自立をして、金銭的にも精神的にも安定し親に余分な心配をかけてはいけない。もし、仮に、万が一、妹の家族が俺の存在を知ることがあれば、せめて一人の人間として恥ずかしくない生活をしていなければならない。そんな使命感が今までになく心の中に渦巻いている。

 俺は本当に自分が嫌いで仕方なくて、こんな俺を認めてくれる人はどこにもいないのだと思っていたけれど、そんなことを言っている場合じゃない。何もできなくたって自信がなくたってまともじゃなくたって、自分の力で生きていかなきゃならないのだ。

 

 俺の人生は俺だけのものじゃない。それを今更はっきりと、思い知ったのである。

 

 嘘をついてでも、見栄を張ってでも、失敗しても躓いても、精一杯やってみよう。やって駄目ならそのときが最後になるのであって、今自分で最後と決めつけるべきじゃない。怖がってる暇はない。

 正直まだしばらくひきずりそうだし、自責も自己嫌悪もそう簡単に抜け出せやしないだろう。そんなすぐ自分を変えられたら苦労しない。だけど腐っているのはやめようと思う。

 妹の人生は俺には関係ないかもしれない。でも俺は俺に胸を張りたい。だから変わりたい。変わらなきゃ生きていけないんだ。

 文字に起こすことで気持ちの整理もついたし、明日から気持ち切り替えていくぞ。

 

 そしてついでみたいになったけど創作も少しずつちゃんと形にしていきたい。創作はずっと続けてきた大事な、俺が俺である証明だから。

 

 

 そして新型コロナウイルスは一刻も早く収束することを願う。お前のせいで予定崩れまくりやぞ。大変な世の中になってしまったけど気をしっかり持って元気に生きていこう。明けない夜はない、はずだ。